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地球大気中の酸素濃度は、約22億年前の原生代初期全球凍結イベントと同時期に急激に上昇して、一時的に現在のレベルにまで増加した後、約1億年かけて現在の100分の1以下のレベルに至ったと考えられている。Harada et al. (2015) は、生物地球化学循環モデルを用いて、原生代初期全球凍結イベント直後の高温環境下における大陸の化学風化反応速度の増大に伴い、海洋に栄養塩が大量に流入することによって、海洋の一次生産(酸素発生率)が劇的に増加するという、大気酸素濃度が必然的に急上昇しうるメカニズムを明らかにした。しかし、全球凍結直後には大規模な有機炭素埋没が生じる結果、全球凍結イベント直後に堆積した炭酸塩岩層(キャップカーボネート層)の炭素同位体比の負異常を説明できない。本発表では、光合成による炭素同位体分別効果や微生物による有機物の分解反応の温度依存性を考慮した場合の海水の炭素同位体比の挙動について調べた結果について報告する。