ICP-MSでの迅速・高精度鉛(Pb)同位体比分析には、タリウム(Tl)添加によるTl外部補正が有効であり、また極微量Pb同位体比分析には脱溶媒試料導入装置が用いられる。これらを組合せた報告例はあったが、脱溶媒過程で複雑なTl同位体分別を引き起こすことから、Tl添加後1時間以内の分析が必要とされ、あまり普及していない。本研究では、これらを組合せた簡易で迅速な高精度分析が可能か検討実験を行った。本研究では、Tl添加をサンプルプローブからネブライザーまでの間にT字混合流路を設置して分析直前に自動で行うようにした。また脱溶媒モジュールを160℃から110℃に変更したことで、Pb濃度によらず一定のPb同位体比が得られるようになった。JA-1、JMn-1における204Pbを含む同位体比の繰り返し再現性(2RSD)は0.16~0.2‰であり、同位体比も報告値と良く一致した。1試料あたり8~10分で測定でき、岩石試料の極微量Pb同位体分析を迅速かつ高精度に行うことが可能となった。