日本地球化学会年会要旨集
2020年度日本地球化学会第67回年会講演要旨集
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G2 環境地球化学・放射化学
ツバルのサンゴ年輪黒色バンドに記録された人為汚染による季節性強還元 (Anoxic) 環境形成史
*中村 修子茅根 創高橋 嘉夫砂村 倫成細井 豪山野 博哉
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p. 35-

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抄録

地球温暖化・海面上昇の危機に直面するツバル環礁は、人口増加による生活排水と廃棄物汚染の問題も深刻である。サンゴ礁への人為影響のタイミングとプロセス解明のために2009年ツバルの首都フォンガファレ島でハマサンゴ骨格年輪を採取した。サンゴ年輪には黒色バンドの混入が見られる。同位体や放射光実験を含む重金属/有機分析、微生物DNA解析を組み合わせ、黒色部からは鉄を主体とした重金属類、付着藻類など過剰な有機物および嫌気性バクテリアの遺伝子断片を検出した。また黒色バンドに見られた赤褐色—灰青色—黒色の色グラデーションが鉄の酸化還元状態を反映し、硫化鉄がサンゴ骨格の炭酸塩結晶中に沈殿していた。これらの結果は、ツバルの人口増加する1991年以降, 未処理の排水からラグーンが富栄養化し, 藻類の季節繁茂やヘドロがサンゴ表面上で嫌気性バクテリアによる硫酸還元(無酸素状態: Anoxic)を発生させ、枝サンゴの斃死などサンゴ礁生態系の劣化につながったことを示す。

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