主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2021年度日本地球化学会第68回年会講演要旨集
回次: 68
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/15
p. 135-
マグマ性流体中のヒ素の挙動を明らかにするために,2018年霧島硫黄山の水蒸気噴火で形成された2つの噴火口湯だまりの熱水と近傍の低温湧水の総ヒ素濃度と化学形態別ヒ素濃度を定量した.湯だまり熱水の総ヒ素濃度は,噴火後最長22か月の間, 3000ppb以上と高濃度であったが,その後500ppb以下に低下した.ヒ素化学形態は,総ヒ素濃度が高い熱水では亜ヒ酸が,低い熱水では亜ヒ酸とモノチオヒ酸が支配的であった.低温湧水のヒ素濃度は80ppb以下であり,ヒ酸が支配的であった.硫黄山の火山性流体中ではヒ素は主に亜ヒ酸として溶存している.モノチオヒ酸が検出された熱水には多量の元素状硫黄が懸濁していたこと,また亜ヒ酸とモノチオヒ酸が定量的に反応していたことより,モノチオヒ酸は湯だまり中で生成されたと判断した.低温湧水中のヒ素は表層地下水との混合により酸化的な環境で安定なヒ酸に変化したと考えられる.