現在の地球表層環境に広く存在するマンガン酸化物の形成に対する微生物活動の役割は、数十年前から議論されてきた。しかしながら、微生物によるマンガン酸化機構や、環境中の微生物群におけるその役割は、依然として不明な点が多い。本研究では、国内の鉄炭酸泉で発見した生物起源マンガン酸化物に対する地球化学的、鉱物学的、メタゲノム解析の結果を報告する。このマンガン酸化物は結晶性が低く、有機物と空間的に結合していることから、微生物起源であることが示唆された。この有機物内に頻繁に観察できるナノスケールの硫化銅の一部はMCOの痕跡である可能性が高く、地質試料中で初めてのマンガン酸化酵素の痕跡の報告例である。また、メタゲノム解析によりマンガン酸化物は好気性微生物群だけでなく嫌気性微生物群とも密接に関連していた。これらの知見は、温泉環境における嫌気性微生物群を維持するためのマンガン酸化物のユニークな役割を示唆する。