地球上生命のタンパク質を構成するアミノ酸はL体が支配的であり、このようなホモキラリティが生じたことは、生命の起源の研究においてまだ解明されていない問題の一つである。ホモキラリティの起源として、宇宙で生成したラセミ体のアミノ酸が、宇宙空間で円偏光フォトンなどの偏極量子放射を受け偏りが生じたという説が提唱されている(Takahashi et al. 2019 Symmetry)。本研究では、原始太陽系に存在していたとされる水素ライマンα放射場に着目し、円偏光水素ライマンα(波長121.6nm)をラセミ体アミノ酸に照射する実験を行い、キラル非対称性が誘起されるかどうかを検証した。照射試料の円二色性(CD)スペクトル測定の結果、新たな光学活性の発現が確認された。