Niラテライト鉱床は超苦鉄質岩が化学風化を受けることによって形成されるが、複雑な風化プロセスの影響により低晶質な鉱物を含むため、Niホスト鉱物を明らかにすることは難しい.そこで本研究では逐次抽出,SEM,Raman分光分析を用いてNi鉱石中のNiホスト鉱物の同定を試みた.逐次抽出の結果より,主要なNiホスト鉱物は蛇紋石やスメクタイトなどの珪酸塩鉱物であること明らかになった.一方で,本試料は有機物をほとんど含まないにも関わらず、鉄酸化物相,有機物相からも多くのNiが抽出された.そこで有機物相から抽出された溶液の化学組成とSEM,Raman分光分析から溶解した鉱物の同定を試みた.その結果,有機物相で抽出されたNiは理想的な化学組成から大きく離れた,低晶質と考えられるスメクタイト由来であると示唆された.したがって,蛇紋石,スメクタイトなどの珪酸塩鉱物に加え,鉄酸化物,低晶質なスメクタイトもNiホスト鉱物として重要であると考えられる。