主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
回次: 70
開催日: 2023/09/14 - 2023/09/24
p. 132-
鉄を主成分とする地球核の密度は純鉄の密度よりも約1割低く、水素、炭素、酸素、ケイ素、硫黄などの軽元素が鉄に取り込まれて密度を低下させていると考えられている。水素は太陽系で最も存在度が高い元素で、高圧条件下では親鉄性となることから、地球核に含まれる軽元素の有力候補である。核に含まれる水素量を明らかにするためには、水素の取り込みにより鉄結晶の単位胞体積の増加とそれにともなう密度低下を評価する必要がある。地球の内核では鉄は六方最密充填(hcp)構造をとり、hcp構造の鉄には、6個の鉄原子に囲まれた八面体構造の空隙と4個の鉄原子に囲まれた四面体構造の空隙があり、水素原子はこれらの原子間サイト(interstitial sites)に入ると考えられる。高温高圧下でのX線回折測定から鉄の単位胞体積を決定可能であるが、電子数1の水素原子からのX線の散乱はきわめて微弱であるため、X線回折では鉄結晶中の水素原子の占有率を求めることはできない。水素原子の占有率を決定するためには、中性子回折測定を行う必要がある。我々はJ-PARC MLF BL11(PLANETビームライン)に設置された六軸型マルチアンビルプレス「圧姫」を用いて、高温高圧下での中性子回折実験を測定し、鉄の水素化反応をその場観察した。実験では軽元素による非干渉性散乱に起因する高いバックグラウンドを抑えるため、重水素を用いた。高温で水素を放出するアンモニアボラン(ND3BD3)を水素源として、鉄とともに水素を遮断できるNaClカプセルに封入して、高温高圧下に置いた。特にここでは鉄の水素化反応に与えるケイ素の影響を明らかにするため、Fe0.95Si0.05を試料として用いた。我々の実験の結果、hcp鉄にケイ素が含まれることで、水素誘起体積膨張率が有為に増加することが明らかになった。これまでの多くの研究では、純粋な鉄の水素誘起体積膨張率に基づいて核の水素量が推測されてきた。しかし、核に含まれると考えられるケイ素の影響を考慮に入れると、これまで推測されてきた水素の推定量は下方修正しなければいけない可能性が高い。