熱塩循環を駆動する南極底層水(AABW)は巨大な炭素の貯留源であるため,炭素循環を通して全球的な気候変動に影響を与えると考えられている.近年,過去数十年の海洋観測から,南極域の淡水化や海氷密接度の減少が観測され,AABW形成への影響が懸念されている.しかしこれらの諸現象は,地球温暖化,もしくは自然現象によるものかは明らかになっておらず,温暖化進行後のAABW形成の変動は不明である.過去の温暖期であるスーパー間氷期(MIS5e,MIS11)は産業革命前よりも+1℃~+2℃温暖な環境であったと推定されているため,将来生じる可能性のある温暖化地球の類推に適した環境である.そこで本発表では,スーパー間氷期を含む過去50万年間のケープダンレー底層水(CDBW)形成の変動およびその環境要因の推定の結果を報告する.