スルメイカの平衡石には酸素安定同位体比(d18O)の履歴が記録されており、スルメイカ固有のd18O-水温の換算式から個体の経験した水温履歴を推定できる。本研究では、d18O履歴に基づく回遊動態の推定を目指し、太平洋と日本海の回遊群の往来が予想される函館で時系列サンプリングをおこなった。平衡石を包埋・研磨・日齢査定をした後に、成長輪に沿って成長段階ごとに切削し、微量炭酸塩安定同位体分析システム(MICAL3c)を用いてd18Oを定量した。結果、函館の個体群に関しては6〜8月にかけての回遊群の交代が示唆された他、富山湾等のデータとの比較から日本海由来の個体が津軽海峡を通じて太平洋に移動する可能性が示唆された。今後研究対象地域を拡大することにより、環境変動に鋭敏なスルメイカの回遊動態の全貌を解明できることが期待される。また、並行して開始したスルメイカ固有の水温換算式の構築についても紹介する。