海藻はある種の重金属(たとえばAs, Cd, Pbなど)を濃縮するため,海洋環境のモニタリングに有用である。本研究ではこれを応用し,養殖昆布中の総水銀濃度を測定することで昆布が海水から水銀を取り込む過程の把握を試みた。測定の結果,昆布が最も生長する4・5月に比べて6月の水銀濃度の上昇割合が大きいことから,昆布は全長増大時と比べて葉体が肉厚になる段階で水銀を取り込んでいると考えられた。中帯部より縁辺部の方が単位重量あたりの総水銀量が多い傾向がみられ,単位重量あたりの海水に接する面積が縁辺部の方が大きいことが要因であると考えた。また,昆布中の窒素濃度変化に比べてδ15N変化が大きいことから,昆布のδ15Nは春から夏への海洋環境変化もしくは,昆布の生長速度の変化を反映している可能性がある。