Sr同位体(87Sr/86Sr)は絶滅動物の移動履歴を復元するための有用なトレーサーである.化石試料へ適用する場合,続成作用の評価が不可欠といえる.従来用いられている酢酸処理は続成作用の影響を十分に除去できない例も存在する.そこで本研究では87Sr/86Sr比による古脊椎動物の生態履歴復元の予察的な取り組みとして,酢酸前処理法と続成作用の指標となる元素(Si, Fe, Mn, REE)の局所組成分析を組み合わせたリン酸塩化石中の続成過程の検討を行った.その結果,エナメル様組織では象牙質の濃度が高い場所に比べてSi, Fe, Mn, REEの濃度が1/5~1/10程度であった.また,エナメル様組織では,REE/Caは現生動物の歯より1000倍程度も高いのに対し,Sr/Caは2倍程度であった.さらに酢酸処理によってエナメル様組織のSr/Caが30%程度減少した.よって,酢酸処理したエナメル様組織では,化石動物の生前のSr同位体情報を十分保持していることが示唆された.