日本地球化学会年会要旨集
2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
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G4 初期地球から現在までの生命圏の地球化学
鉄の化学形態に着目した魚類の肝臓-筋肉間における鉄安定同位体比の変動機構の解析
*長谷川 菜々子高橋 嘉夫白井 厚太朗板井 啓明
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p. 72-

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抄録

本研究では、マサバ試料6検体を対象に、鉄の主要形態としてヘム鉄 (ヘモグロビンなど) とフェリチンの2成分を仮定し、(1) X線吸収微細構造 (XAFS) を用いた各組織での両成分の比率解析と、(2) 組織別δ56Fe分析を実施し、両成分間のみかけの安定同位体分別係数 (ΔFeferritin-heme) を推定した。 1個体あたりのδ56Feの平均値は−1.42から−1.30‰で、試料全体を通じて比較的類似していた。7組織中δ56Feは、ほとんどの組織間で均質であったが、肝臓中δ56Feは0.29から0.59‰程度高値を示した。雌雄間の有意差は認められなかったが、生殖腺δ56Feの個体差が大きく、特に精巣は高値を示す傾向があった。各組織のFe K端XANESの線形結合フィッティングの結果から、ヘム鉄とフェリチンの比率を臓器ごとに比較したところ、肝臓中フェリチンは肝臓中総鉄の約8 - 29%を占め、血合筋はほぼ100%がヘム鉄と推定された。肝臓について、二種混合系を仮定したマスバランス式によりΔFeferritin-hemeを推定したところ、1.84 ± 1.06‰であり、理論的予測と整合的な範囲であった。このことは、(1) 腸管吸収後の鉄循環は半閉鎖系、(2) ヘム鉄-フェリチン間の鉄のやり取りは可逆的、という2つの仮定を支持する結果であった。

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© 2023 日本地球化学会
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