現在の海洋鉄循環において、海底堆積物中の鉄の溶出および海洋への流出プロセスは最大の鉄供給プロセスであると考えられているが、推定されている供給量には大きな不確定性がある。また、堆積物中の鉄の挙動は地球史を通じた海水中の酸素や硫酸などの濃度変化により大きく変化してきたはずで、現在とは異なる環境条件での鉄の挙動は、定量的にはほとんど理解されていない。本研究では、堆積物中のC, N, Fe, Mn, Sの挙動を再現する鉛直1次元反応輸送モデルを用いて、現在と過去の海洋環境を想定した様々な条件での初期続成作用中の鉄の挙動に関する検討を行った。その結果、硫酸濃度を低い値から現在値まで増加させていくと、有機物の硫酸還元によって発生した硫化水素による鉄還元反応や生物擾乱によって深部から供給された硫化鉄の溶解反応による鉄の溶出が堆積物表面付近で卓越する場合には、海洋への鉄流出フラックスが直感に反して増大するといった新たな知見が得られた。