日本地球化学会年会要旨集
2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
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G5 古気候・古環境解析セッション
X線CT技術を用いた炭酸塩溶解測定による深層水炭酸イオン濃度復元:南大洋チリ沖における古海洋研究への応用
*岩崎 晋弥Lembke―Jene Lester長島 佳菜Arz Helge原田 尚美木元 克典Lamy Frank
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p. 90-

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抄録

南大洋チリ沖は、最終退氷期(10-19 ka)に深層水循環が活発になるイベントが発生しており、CO2の放出域であったと考えられている。しかし本海域におけるCO2放出が炭素循環全体にどの程度のインパクトを持つのかは不明であり、これを評価するためには深層水炭酸イオン濃度の定量的な復元が不可欠である。本研究は、従来の研究で利用されてきた底生有孔虫化石のホウ素濃度測定に代わる新たな深層水炭酸イオン濃度指標として、マイクロフォーカスX線CTスキャナによる浮遊性有孔虫化石の殻密度測定を南大洋チリ沖で採取された4本の堆積物コア試料に適用し、最終氷期極大期以降の定量的な深層水炭酸イオン濃度変動を水塊別に復元した。その結果、大気中のCO2濃度が上昇する最終退氷期初期(15-19 ka)に南極周極深層水(CDW)の炭酸イオン濃度が顕著に上昇していたことが明らかになった。これは深層水中の溶存無機炭素量(DIC)が低下したことを示唆しており、南大洋チリ沖の深層水が最終退氷期の大気CO2濃度上昇にとって重要な役割を担っていたことを示している。本講演では、上記の応用研究の成果に加えて、新指標の開発と実用化そして将来的な展望についての議論も行う。

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