炭素質コンドライトにおけるハロゲン濃度は、原始太陽星雲における分別、母天体上での水-岩石相互作用や熱変成作用を考える上で重要である。しかし、隕石中のハロゲン濃度は低い (ppb-ppm) ため、その定量分析には課題が多く、中性子放射化分析(RNAA)や中性子照射-希ガス質量分析 (NI-NGMS) で得られた隕石のハロゲン濃度は不一致を示す。この不一致の主要な原因として、i)分析法の違い、ii)試料調製の違い、あるいは iii)試料内不均質が考えられる。ClayらはNI-NGMSを用いて炭素質コンドライトであるAllende隕石の極めて低いハロゲン濃度を報告した。その試料量は非常に小さい (0.7 mg粉末) ため、結果の不一致は iii)に起因する可能性がある。これを検証するためには、NI-NGMSを使用してより大きな試料のハロゲン濃度を分析し、結果を比較することが重要である。そこで本研究では、NI-NGMSを使用してAllendeのより大きな試料のハロゲン濃度を決定し、報告値不一致の原因(i-iii)を調べた。