日本地球化学会年会要旨集
2024年度日本地球化学会第71回年会講演要旨集
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G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
多種の元素の価数分析によるRyugu母天体中の酸化還元環境復元
*大野 智洋河合 敬宏竹本 亜優山口 瑛子菅 大輝上椙 真之山下 翔平高橋 嘉夫
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p. 157-

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抄録

小惑星Ryuguの母天体内部では加熱により水の氷が溶解し, 還元的な物質と反応して塩基性・還元的な水環境が存在したと推定されている。このような環境で非生物的に合成された有機物が地球上の有機物の起源となっている可能性がある。そこでRyugu母天体の水質変成時における水環境を推定するため, Ryugu試料とCIコンドライトであるOrgueil隕石中のクロム(Cr), チタン(Ti), バナジウム(V), ヒ素(As), 鉄(Fe), 硫黄(S)のX線吸収端近傍構造(XANES)を測定し, 熱力学計算によって得られたEh-pH図と比較した。さらにOrgueil隕石の結果と比較して大気酸化による諸元素の価数変化を検討した。その結果, CrはRyugu試料全体で主にCr(III)であったが一部ではCr(II)が見られた。TiはTi(IV)を主体とし, ilmeniteと層状ケイ酸塩に分配していた。Asは層状ケイ酸塩ではAs(V), リン酸塩の濃集点ではより還元的な化学種が主体であった。Vは鉱物組織にかかわらずV(III)として均一に分布していた。これらの価数を総合し, Ryugu母天体は水が分解して水素が発生するような非常に還元的な環境が形成されていた可能性が示された。

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