日本地球化学会年会要旨集
2024年度日本地球化学会第71回年会講演要旨集
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G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
ESI-Orbitrap質量分析法による多環芳香族炭化水素の同位体分子計測
*金 範植上野 雄一郎
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p. 205-

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抄録

多環芳香族炭化水素(PAH)は、大気・環境化学における重要な研究対象である。PAHは超高熟成度ケロジェンの水素熱分解でも抽出でき、その安定同位体計測は有機地球化学的に有用な情報を与える。PAHの同位体計測には一般的に連続フロー型のGC-C-IRMSが用いられる。しかし、従来法を多重置換同位体分子計測や分子内同位体分布の高精度計測に応用・拡張するには限界がある。測定精度を向上するには標準試料との交互分析が必要だが、PAHはガス化が難しくDual Inletによる注入が適用できない。本研究では有機溶媒中のPAHをDual Syringeで注入し、ESIでイオン化、Orbitrap高質量分解能質量分析計で精密質量を見分ける高精度同位体分子計測法を新たに開発した。最適化した分析条件の下、和光製薬、Sigma-Aldrich二社試薬の交互分析を行い、アントラセンでδ13C = +1.2±0.7‰、δ13C13C = -1.1±0.9‰、フェナントレンでδ13C = -1.1±0.3‰、δ13C13C = +4.7±0.9‰、と同位体比に有意な差が見られた。各分析の試料量は14nmolと極微少量で高精度の分析が実現した。

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