主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2024年度日本地球化学会第71回年会講演要旨集
回次: 71
開催日: 2024/09/18 - 2024/09/20
p. 254-
地球史においてシアノバクテリが「いつ」「どこで」発生し繁茂したのかは未解明の大問題である。この問題はしばしば、大気大酸化事変と関連つけて議論されてきているが、曖昧なままである。本発表では、国際大陸掘削計画 (ICDP)で行われたMoodies層群の掘削 (BASE project)とそれに関連した調査、分析結果をもとに、大酸化事変よりもはるか前の32億年まえの陸域から沿岸域にかけてシアノバクテリアの活動があった事例を紹介していく (1)。Moodies層群は32億年前の陸域から沿岸域で形成された堆積岩を主体にしている。その中には微生物マットの痕跡が残される岩石も多くある。特に陸域扇状地の礫岩マトリックス部分には、多量の有機物や成層構造の顕著な黒色チャートも見られる。これら礫岩中には化学合成に必要な物質は見出されず、光合成微生物を一次生産者とした陸域生態系の可能性を示すものである。この発見は、Moodies層群からのシアノバクテリア痕跡の報告とも整合的である (2,3)。Moodies層群のもう一つの大きな特徴は沿岸域砂岩に縞状鉄鉱層やジャスパーが胚胎し、沿岸域が酸化的であったことを示していることである。ホストの砂岩中からも有機物が検出され、縞状鉄鉱層が微生物生産性の高い環境で形成されていたことを示す。有機物の窒素同位体は典型的な微生物による窒素固定の特徴を有する。掘削で得られた新たな知見や地球化学的データを統合すると、32億年前の陸域から沿岸域にかけて、シアノバクテリアの活動は既に活発であった可能性を示している。ただグローバルスケールで酸化的環境が蔓延していたのかは不明である。さらにMoodies層群堆積時期は、バーバートン地域における大規模なTTG形成及び隆起時期とも一致している。同時に陸域から沿岸域では浅部マグマ活動に起因する熱水活動も活発であった。こうした初期大陸環境の形成や浅部熱水活動ともリンクし、初期シアノバクテリアが活動していた可能性も新たに見出された。References: (1) Heubeck et al., 2024, Scientific Drilling 33, 129-172; (1) Javaux et al., 2010, Nature, 463, 934-936; (2) Homann, 2019, Earth-Sci. Rev. 196, 10.1016/j.earscirev.2019.102888.