背弧海盆の成長・進化は、沈み込みシステム全体の理解において重要なファクターとなる。特に、マグマのソースとなるマントルの実態解明は、背弧におけるマグマ生成のメカニズムやその非定常性を明らかにする上で重要である。しかし、背弧由来のマントル物質を採取できる場所は限られており、これまでその理解が遅れていた。近年地中海の背弧海盆であるティレニア海盆では深海掘削が実施され、マントル物質であるカンラン岩の採取に成功した。カンラン岩は変質を被っているが、薄片観察したところ初生的な鉱物であるカンラン石や輝石、スピネル、斜長石を観察することができた。岩石記載結果と化学組成結果から、ティレニア海盆のマントルは、溶融や交代作用による化学不均質性が生じていることが明らかとなった。本発表では、より詳しくその化学不均質性を生じるメカニズムを論じる。