主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2024年度日本地球化学会第71回年会講演要旨集
回次: 71
開催日: 2024/09/18 - 2024/09/20
p. 272-
資源量の維持・増加のためにニホンウナギの放流が行われているが、資源維持への効果は不明であり、さらに天然個体の本来の分布を撹乱したり、天然・養殖個体の割合を不明にしたりする恐れがある。また、既存の天然・養殖判別手法は判別精度や簡便性に欠ける。そこで水晶体の炭素・窒素の安定同位体分析することで天然・養殖個体を判別する手法の開発を目的とした。水晶体は内側から時系列で形成されるため餌に違いがある期間の部位の組成を比較することで、天然・養殖個体を判別できる。試料は放流前の養殖個体と放流のない河川の天然個体を使用し、水晶体の炭素・窒素同位体組成を分析した。その結果、天然・養殖個体間では炭素・窒素の同位体比の分布は明瞭に異なっており、天然・養殖個体判別が可能であることを示唆している。本手法は養殖個体の産卵への寄与、天然個体の本来の分布域、各河川の天然・養殖個体の比率、などの推定に応用することができる。