Crは, 表層環境でCr(VI)とCr(III)の二つの価数で存在し, 酸化的かつ中性pH付近の陸水では易溶性のCr(VI)が安定である. Crの安定同位体比は, 主にCr(III)とCr(VI)の酸化数変化に起因して変動するため試料の酸化還元履歴を記録している. 海洋堆積物では, 岩石の酸化的風化によって同位体的に重いCr(VI)が河川に放出されるため, 高いCr同位体比が観測されると考えられているが, この解釈は酸化還元度や塩分濃度などの物理化学的条件が大きく変化する汽水域でも, Cr同位体比が保存的な挙動を示すことを仮定している. 本研究では, 汽水域におけるCrの地球化学的および同位体的挙動の理解のため, 高知県久万川および桜川において塩分勾配に沿ったCr濃度, 化学種, 同位体比の変動とその要因を調査した.