近年,バイオモニタリング技術を用いた海洋環境把握に関する研究が進められている。当研究室では,大型藻類がある種の重金属(たとえばAs, Cd, Pbなど)を濃縮することを利用し,養殖昆布を用いて海洋中の水銀濃度を間接的に把握するための基礎研究を行なっている。本発表では,L-システイン溶液により昆布表面の洗浄を行うことで,表面吸着している水銀と,生長時に葉体内に取り込む水銀との区別を試みた。測定の結果,溶出液から検出された水銀(表面吸着形態の水銀)と洗浄後の昆布中から検出された水銀(内部蓄積形態の水銀)の割合は約1 : 2であり,各試料における単位重量あたりの水銀検出量は内部蓄積形態の方が試料間で比較的一定であった。このことから,昆布は生長位置による内部取り込み量に大きな差はなく,生長時に海水から葉内に一定量を取り込み蓄積していることが示唆されると同時に,水銀の二次的な表面吸着が昆布の総水銀濃度に影響を及ぼしていると考えられる。