地球の窒素循環は微生物反応で駆動されており、その多くはアデノシン三リン酸(ATP)獲得を目的とした電子移動を伴う酸化還元反応である。現状確認されている微生物の窒素エネルギー代謝反応は多様である一方、窒素化合物を電子ドナーもしくは電子アクセプターとする反応の組み合わせはさらに多岐にわたる。ATP生成率が高い酸化還元反応を触媒する酵素機能の獲得は、その酵素機能を持つ微生物の適応度の向上に貢献しただろう。したがって、現在地球上に存在する微生物窒素エネルギー代謝は、エネルギー的に好ましい反応を利用する微生物が進化した結果である可能性がある。この仮説を検証するために、エネルギー的に優れた窒素反応群と微生物窒素反応群の類似性を評価した。エネルギー的に優れた窒素反応群は、11の無機態窒素化合物間で生じうる約1,000の反応群の速度論モデルを構築し、定常状態における反応速度と反応ギブスエネルギーの積で順位付けした上位反応と定義した。微生物窒素反応群は、窒素代謝を触媒する酵素反応から定義した。これらの2つの反応群をグラフ理論手法で解析し、化学種間のリンク重複度により類似性を定量評価した。その結果、反応の方向性に対する熱力学的寄与を十分に考慮した場合に、エネルギー的に優れた窒素反応群と微生物窒素反応群の類似度が高くなる傾向があった。さらに、硝化反応と嫌気的アンモニア酸化は、エネルギー的に優れた反応群に頻繁に含まれた。これらの結果は、熱力学的に決定する反応の方向性やエネルギー変化が微生物の代謝進化に大きな影響を与えてきたことを示唆する。