黒潮の変動を長期的に把握することは気候変動の理解に重要であるが,黒潮流域における水温などの連続する観測記録は過去数十年間に限られており,地質試料を用いたデータの拡張が求められる.本研究では,琉球列島北部における海洋の物理的・化学的特性(水温,塩分,溶存無機炭素の同位体組成など)を長期的に復元することを目的とし,黒潮流域に位置するトカラ列島悪石島から採取した現生の硬骨海綿の炭素・酸素同位体組成,微量元素濃度の分析を行った.放射性炭素同位体濃度を高精度かつ高分解能で測定し,1840年から2012年の時系列データを構築した.酸素・炭素同位体組成,Sr/Ca比は長期的な減少を示し,20世紀半ば以降の温暖化とSuess効果を反映していると考えられる.