古第三紀前期に発生した急激な温暖化イベントである,暁新世-始新世境界温暖化極大(Paleocene-Eocene Thermal Maximum: PETM)は,短期間に大量の炭素が地球表層に放出され,急激な温暖化が進行した点で,人類が直面する地球温暖化のパレオアナログとして注目されている.PETMの発生原因は現在も議論が続くものの,北大西洋火成岩岩石区(North Atlantic Igneous Province: NAIP)の活動が重要な要因とされる.よって,PETMの発生メカニズムを理解し,大規模火成活動と地球表層環境変動のリンケージを解明する上で,NAIPの活動の実態把握が重要となる.そこで本研究では,火山活動のプロキシである,堆積物の水銀濃度に注目し,NAIPによる火山活動の強度とその影響範囲の推定を行った.本発表では,インド洋と太平洋の4地点の海底炭酸塩堆積物についてPETM層準周辺における水銀濃度を報告する.さらに,大西洋における既存記録との比較を通じ,NAIPの活動の影響の時空間的な広がりを評価し,PETMの発生との関連を議論する.