隕石や小惑星に代表される太陽系物質からは核酸塩基が検出されており,生命起源との関連が指摘されている。しかしながら,この核酸塩基が初期太陽系においてどのように生成したのかは明らかでない。本研究では,小惑星中の水質変質を模擬した水熱反応実験により,太陽系物質中に含まれる核酸塩基が生成するかどうか検証した。実験は,小惑星に含まれていたと考えられる揮発性分子を含んだ水溶液を60-130˚Cで加熱することにより行った。実験生成物の分析の結果,太陽系物質に含まれるプリン塩基とピリミジン塩基の両方の生成が確認された。生成されたプリン塩基とピリミジン塩基の量比は,出発物質の組成と反応温度に影響されることが明らかとなり,これは先行研究における太陽系物質の分析結果とも整合的である。本結果は,核酸塩基が小惑星中の水質変質に伴い生成した可能性を示唆するものであり,今後のリターンサンプルや炭素質隕石の分析による検証が期待される。