火山性の硫化水素や二酸化炭素が地表付近に濃集して中毒事故を引き起こすのは、これらの分子量が空気の平均分子量より大きく重いことが原因とされることが多い。しかし、対流圏内は一般に分子量の大小が支配する分子拡散よりも渦拡散の方が桁違いに速いとされており、矛盾している。火山ガスの中毒事故の再発を防止する上で主要拡散過程を理解することは不可欠である。そこで本研究は火山ガスの噴気孔近傍で水素や硫化水素、二酸化炭素の濃度を高度別に同時測定し、分子拡散によって濃度比の高度分布が変化しているかどうか調べた。また、火山ガスの冷却が高度分布に与える影響を検証した。2025年6月に箱根上湯場噴気帯で行った観測では、分子量の大小は高度分布に影響せず、渦拡散が主要な拡散過程であることが確認された。また、冷却によって火山ガスが下方に濃集する傾向が見られた。