硫黄同位体比(34S/32Sの千分率偏差)は硫酸イオン起源や微生物が関与する硫酸還元反応履歴を反映する指標で、地下水においては涵養や混合など水文学的な条件と、地球化学的および微生物学的な硫黄サイクルを反映する。本研究ではバングラデシュで採取された河川水と地下水から微量の硫酸態硫黄を精製し、同位体分析を行うことで硫黄の物質動態を評価する。ガンジス川、ブラマプトラ川、メグナ川の同位体比は5.0〜6.7‰で典型的な河川水の範囲にある。これに対して地下水は硫酸イオン濃度が河川水よりも低いかほぼ枯渇しており、同位体比は−4.9‰から最大で~50‰と非常に大きな範囲をとる。硫酸イオンの枯渇に伴い硫黄の同位体比が顕著に増加する地点がみられる一方で、低濃度試料でも負の値を示す試料がみられ、微生物による硫酸還元反応と硫化物などに由来する硫黄の付加の複合的な影響が示唆される。