日本地球化学会年会要旨集
2025年度日本地球化学会第72回年会講演要旨集
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G4 初期地球から現在までの生命圏の地球化学
嫌気性マンガン酸化菌群の培養化と生理代謝機能予測
*塚本 雄也福士 圭介清水 美智留大熊 盛也吉澤 晋
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p. 71-

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抄録

貧酸素な太古代海洋におけるマンガン酸化物の生成機構の解明は、酸素発生型光合成における酸素生成反応を触媒するマンガンクラスター(Mn4CaO5)の起源を解明する上で重要である[1]。嫌気性マンガン酸化菌によるマンガン酸化はその有力候補であるが、これまでにその単離例がなく、共培養の報告も2例に限られるなど、難培養性菌であることが知られている[2, 3]。さらに嫌気的マンガン酸化機構への理解は限定的である。本研究では、陸上温泉に産するマンガン酸化物を分離源として、主に2種類の細菌からなる嫌気性マンガン酸化菌群の共培養化に成功した。TEM-EELS分析より、マンガン酸化物はMn3O4, Mn2O3, MnO2の3種類からなり、菌体の周囲を覆うように形成されていた。既知種であった片方の菌(HK1株)は嫌気性従属栄養細菌で、マンガン酸化能の報告はない[4]。一方で残りの1種(HK4株)は新科相当の新規性の高い菌であった。FISH法よりHK1株は糸状の形態を、HK4株は桿菌から球菌の中間的形態を示し、TEM像でマンガン酸化物とともに観察された形態と類似した。両菌のゲノム・RNA解析・増殖曲線の比較から、HK4株が炭酸固定を行い、固定された有機物をHK1株が発酵により消費している可能性が示唆された。Mn濃度減少時に、Fe2+とCaの濃度上昇が確認された。Ca濃度上昇の理由は不明であるが、添加したCitrateFe3+が電子受容体として機能し、嫌気的マンガン酸化が起きた可能性が示された(Mn2+ + 2Fe3+ + 2H2O → MnO2 + 2Fe2+ + 4H+)。一方で、Mn濃度の減少はHK1とHK4株の増殖が定常期に入ったタイミングで起こることから、エネルギー代謝として利用されていないことが推察された。このことは培養条件における上記の酸化反応のΔG値が最大でも約-6.6 kJ/molとATP生産に必要とされている約-20 kJ/molには至らないことからも傍証される。本研究では水酸化鉄存在下では増殖を確認できなかったことから本菌群による嫌気的マンガン酸化には、溶存Fe3+が必要であると考えられる。現在の海洋で、溶存Fe3+の定量データは皆無であり、初期地球海洋での利用可能性は未知であるが、鉄還元に伴う嫌気的マンガン酸化が立証できれば、初期地球環境における嫌気的マンガン酸化機構を理解する上で重要な知見となると期待される。

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