水圏生物地球化学の理解・予測において、反応のギブスエネルギー変化(ΔrG)は重要な指標とされてきたが、その予測力は本来、平衡近傍の閉鎖系でのみ保証される。それにもかかわらず、多くの天然環境でΔrGが反応の進行方向の目安となるのは、非平衡開放系においても熱力学が強い駆動力として作用していることを示唆する。本発表では、ΔrGが天然環境でどの程度機能し、どのような時間スケールで応答が現れるのかを検証した。海面養殖場堆積物の微生物群集を人工海水培地で連続培養し、3時間ごとに11日間サンプリングした化学種と環境DNAの時系列データに対して熱力学的解析とメタゲノム解析を行った。その結果、熱力学的安定性が多数の反応において重要な駆動力として作用し、ΔrGの変化に対して機能遺伝子コピー数が時間遅れを伴いながら増加し、十分な酵素が揃うと反応が速やかに進行することが示された。