抄録
岩盤中の断層区間は,地下の地質環境や地盤の工学的性能を評価する際の重要な要素の一つである.しかしながら,ボーリング調査では様々な制約により,常に同じ品質や量のデータが確保できるとは限らず,諸条件によって評価結果が異なる可能性がある.そうした評価結果の差異は,地質環境を理解していく過程での不確実性の増大につながり,その後の計画立案時における適切な意思決定を難しくするだけでなく,直接的な施工のリスク要因にもなる.そのため本研究では,岐阜県瑞浪市でのボーリング調査データを用いて,使用する変数を明確な基準で選択した上で,多変量解析(主成分分析およびクラスタリング)を適用した.その結果,客観的な基準により,岩盤を高精度で区分し,断層区間を適切に判定できるようになった.これにより,一つの調査項目のみに注目した従来の解析に比べ,多種情報を一度に扱う多変量解析は有効な手法であることが実証された.