情報地質
Online ISSN : 1347-541X
Print ISSN : 0388-502X
ISSN-L : 0388-502X
総説
論理地質学の展開:地質情報処理の数学的基礎を求めて
塩野 清治
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 30 巻 4 号 p. 161-179

詳細
抄録
「論理地質学」は地質情報のコンピュータ処理の理論的基礎として,地質学における論理の体系を数学の形式で再構築することを目的として,弘原海ほか(1987)によって提唱された新しい学問分野である.本稿は1990年の日本情報地質学会設立から30年間の研究成果を総括する.地質学では連続な空間や時間が地質単元や地質年代に分割され,それら離散化された対象の関係が研究対象となる.この観点から主に離散数学を基礎にして,新しい理論とアルゴリズムの開発・展開が進められてきた.主な成果は次の通りである,(1)初生的水平性の法則,側方連続性の法則,地層累重の法則という地層の基本的特性を数学表現する3つの公理,(2)露頭での地質体の接触関係を表現するラベル付き有向グラフ,(3)多数の露頭での観察結果を統合して地域層序を求めるデータ処理の流れ,(4)生層序学の基本的手続きをシミュレートする単純な数学モデル,(5)地質構造の3次元モデルを数学表現するための地質体と面の間に成り立つ論理的関係(地質構造の論理モデル),(6)地質構造の論理モデルを図式表現するラベル付き2分木,(7)論理モデルに関係する多様な集合演算を実行するためのビット演算法.地質情報処理を多面的に推進させるために論理地質学のさらなる発展が望まれる.
著者関連情報
© 2019 日本情報地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top