抄録
地質図作成の自動化を考えるにあたって, これまで漠然としていた作成目的・視点の違いによる地質図の多様性を考察した.現実の地質図作成過程を念頭におけば, その前段階のモデル化の視点には, 大きく分けて (i) 現実の地質状態をできるかぎり正確かつ忠実に表現しようとするものと, (ii) 地質学上の特定の概念や関係のみを強調して表現しようとするものの2通りがあると考えられる.そしてすべての地質モデル構築の視点はこれらを座標軸とするいずれかの位置に表現できる.モデルが数値的に表現されたものであれば, 座標上のいずれのモデル間でも変換は可能であろう.
目的・視点に応じた様々なモデルの構築手順としては, この互換性を基礎にして, 基本となる精緻なモデルから様々な概念や関係を強調したモデルへ変換していくことが考えられる.ただし, 内挿法によって断片的な野外データから基本モデルをつくるにあたってはある程度の概略的なモデルの存在が前提となる.これが地質図や地質モデルに主観の入る大きな原因と考えられるため, この段階におけるアルゴリズムの確立も必要である.