抄録
離散数学とは有限の対象ないしは離散的対象を扱う数学の一分野であり, 情報科学の基礎理論として最も重要な位置を占めている.地質学では連続な空間や時間を地質体や地質年代のように離散化して取り扱うところに特徴があり, その情報処理においては連続体を離散化する方法や離散的な対象の扱い方が重要な課題である.本講座は情報地質学分野の研究を指向する学生や大学院生を対象とした離散数学入門のテキストである.離散数学が扱う対象は広範囲にわたるので, 「数学の教科書から地質学に役立つ概念を読みとる」ことを目標において, 内容を集合, 関数, 関係, 同値関係, 半順序, プール代数に限定して, その考え方や地質学との関連性を解説する.いくつかの地質学への応用例を通じて, 離散数学は地質情報の数学表現やコンピュータ処理の基礎として有効であることを示す.