2026 年 37 巻 1 号 p. 3-18
本研究は地熱資源の有効利用促進のために地熱発電生産井の設置に適した場所を蒸気スポットと称し,地表浅部の情報から蒸気スポットの場所を数理地質学,リモートセンシング,地球化学での手法の組合せで特定できる手法の開発とその有効性の検証を目的とした.その対象として明瞭な地表地熱兆候を確認できるインドネシア・バンドン盆地南部のWayang Windu地熱フィールド(WWGF)を選んだ.DEMの多方位陰影画像から抽出したリニアメントの卓越方位はボアホール亀裂データの最卓越走向に概ね対応し,GEOFRACで作成した3次元亀裂分布モデルは断層付近で断層の方向と平行する亀裂が多く分布したので,リニアメントの卓越方位は実際の亀裂系の卓越走向に対応する可能性が高い.熱水流体の上昇域の特定にはハイパースペクトル衛星画像解析からの熱水変質鉱物の抽出と地中ガス222Rn濃度の時間的変化パターンが有効であり,カオリナイト分布の卓越部,および高222Rn濃度で測定時間が経過しても濃度がほぼ一定のパターンを示す場所で地下深部からの流体の供給が推定された.また,このような場所直下の貯留層に分布する水は蒸気や蒸気凝縮水であると解釈できたとともに,熱水の化学組成・同位体組成から地熱流体の起源や循環状態を明らかにできた.さらに,リニアメント密度,222Rn濃度,地化学データを組合せ,蒸気スポット存在評価マップを作成したところ,生産井先端の多くが高評価部に位置することがわかった.AMT比抵抗分布より,高評価部には貯留層に繋がる連続的な亀裂が発達し,高温の地熱流体の上昇が顕著である可能性が高いと解釈できたので,蒸気スポット検出法の有効性を実証できた.