抄録
都市部の車道と歩道の境界に分布する土砂 (「道路堆積物」と呼ぶ) が, 法科学に応用可能かどうかを検討する目的で, 京都府下の試料 (74 μm以下) について顕微鏡観察と化学分析を行ったところ, ほとんどの道路堆積物は京都市周辺の後背地の表層風化物よりも重金属に富み, 同じ採取地点の道路堆積物は年間を通じて化学組成がほぼ一定であることがわかった. さらに, 異なる二つの都市 (京都市と舞鶴市) の道路堆積物の化学組成には明確な差異が認められたことから, 道路堆積物が法科学に応用可能であると考えられた.
道路堆積物試料中の銅の含有量は, その場所の交通量に比例する傾向がみられることなどから, 道路堆積物に含まれる銅は自動車のブレーキ部品に由来するものと考えられた. また, 舞鶴市におけるクロムは超塩基性岩に含まれるクロムスピネルに由来するものと考えられた.