地質学雑誌
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論説
花崗岩割れ目周辺の酸化還元反応と二次的物質移動現象
—地質環境中汚染物質の移動と長期的固定に関するアナログ研究—
赤川 史典吉田 英一与語 節生山本 鋼志
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2004 年 110 巻 11 号 p. 671-685

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抄録

高レベル放射性廃棄物の地層処分には, 地下環境の還元状態の維持が重要だと考えられている. しかし, 処分場では操業期間中の空気の浸透に伴い, 酸化還元フロントが周辺岩盤に形成される可能性がある. この酸化還元フロントの形成に伴う二次的な物質移動を解明するため, 苗木花崗岩体の割れ目近傍に発達した酸化還元フロントに注目し, 二次的な物質移動現象の調査解析を行った. XRFおよびICP-MS分析の結果, 二次的に変質した部分は母岩に比べFe, Mn, Pb, Ba, Rb, U濃度が増加した. とくにFe, U, REEはフロント付近, Mn, Pb, Ba, Rbは割れ目近傍に濃集することが判明した. これらの調査結果は, 酸化還元フロントの形成に伴ってUやREEをはじめとする微量元素が二次的に移動・濃集・固定されることを示唆する. このような現象は, 処分場近傍の酸化還元フロントの形成に伴って同様に生じると考えられる.

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© 2004 日本地質学会
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