地質学雑誌
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論説
糸魚川—静岡構造線活断層系, 下円井断層に伴う粉砕起源のシュードタキライト
狩野 謙一林 愛明福井 亜希子田中 秀人
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2004 年 110 巻 12 号 p. 779-790

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抄録

糸魚川—静岡構造線活断層系の南部セグメント, 下円井断層において, 上盤側の石英閃緑岩起源のカタクレーサイトと下盤側の段丘砂礫層とが接する衝上断層面と厚さ7~8mの範囲の上盤側カタクレーサイト帯中に, 黒色脈状岩が散在しているのが認められた. その産状と組織から, この黒色脈状岩は粉砕作用によって細粒化した粒子を主体として構成されるシュードタキライトとみなすことができる. このシュードタキライトのうち, 断層面およびそこから上盤側30~40cmの範囲に派生する多数の注入脈と下盤側の砂礫層中に注入された小脈は断層面起源であり, その最新活動に伴って形成されている. この断層の最新活動は1550±70~2350±60y.B.P.で, その時の段丘砂礫層中での傾斜すべり変位量は1.0~1.2mと見積もられている. このことから, シュードタキライトの少なくとも一部は, 地表近傍での1.2m前後の地震断層変位で形成されたことになる.

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© 2004 日本地質学会
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