抄録
戸室火山の戸室山 (安山岩の溶岩ドーム) で岩石磁気・古地磁気学的研究を行った. 詳細な磁気測定により安山岩に含まれる磁性鉱物の種類, 量, 粒子サイズを推定した. マグネタイトとヘマタイトが残留磁化の担い手だが, 溶岩ドーム内部の大部分をなす淡青灰色の安山岩 (青戸室石) とドーム表層部をなす赤味を帯びた安山岩 (赤戸室石) の間で両鉱物の量とマグネタイトの粒子サイズが異なる. 赤戸室石では高温酸化によりマグネタイトの大部分がヘマタイトに変化し, それがマグネタイト量の減少と細粒化, 及びヘマタイト量の増加をもたらした. 戸室山では3地点で正帯磁の平均方位が決定されたが, それらは有意に異なっていた. 溶岩ドームの表面では熱残留磁化の獲得後に溶岩の変形が起こった可能性が高い.