抄録
阿蘇カルデラ内に分布する高野尾羽根流紋岩溶岩から得られた4本のボーリングコアの構造記載を行い,内部構造の発達過程を議論した.高野尾羽根溶岩は上部の軽石質層と黒曜石層の互層,中部の結晶質層,そして下部の黒曜石層の三層準からなる.この内部構造は流動時の冷却と脱ガス過程を経て形成されると考えられる.中部の結晶質層には,周囲よりも結晶化し,微細な空隙を多量に含む微細空隙部が存在している.この微細空隙部は,溶岩の噴出直前あるいは直後に形成されたと考えられる.給源から離れたボーリングコアでは,微細空隙部が流動により引き伸ばされ流紋岩溶岩に特徴的な縞状の流理構造を形成する.またその微細空隙部により規定される流理構造の傾斜角は,結晶質層の上部ほど大きくなる傾向があり,ランプ構造を呈している.