地質学雑誌
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論説
湖底堆積物中の有機炭素含有率と湖水中の生物生産性,および気象要素との関係-長野県,木崎湖における21年間の湖沼観測からの検証-
公文 富士夫金丸 絹代田原 敬治角田 尚子山本 雅道林 秀剛
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2005 年 111 巻 10 号 p. 599-609

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抄録

木崎湖において2003年12月に採取した35 cm長の柱状堆積物について検討し,1969年以降の3回の大洪水の層準を認定した.その年代をもとにして平均堆積速度を求め,有機炭素含有率の経年的な変化を求めた.一方,1981年以降に木崎湖で行われてきた毎月の湖沼観測記録をまとめ,21年間のクロロフィルa量の経年的な変化を明らかにして,湖水中の生物生産量の指標とした.また,アメダス気象観測資料を用いて,気温や降水量などの気象要素の資料を得た.これら3者間の相関を検討して,有機炭素含有率は,年間クロロフィルa量および冬の平均気温と有意な相関をもつことを見出した.冬の暖かさ(厳しい冬の短さ)が冬季の生物生産性を高め,それが年間の生物生産量に影響を与えて,堆積物として沈積する有機物量を増加させたと考えられる.湖沼堆積物中の有機炭素含有率は,過去の気温(冬の平均気温)の指標として有効である.

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© 2005 日本地質学会
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