抄録
木崎湖において2003年12月に採取した35 cm長の柱状堆積物について検討し,1969年以降の3回の大洪水の層準を認定した.その年代をもとにして平均堆積速度を求め,有機炭素含有率の経年的な変化を求めた.一方,1981年以降に木崎湖で行われてきた毎月の湖沼観測記録をまとめ,21年間のクロロフィルa量の経年的な変化を明らかにして,湖水中の生物生産量の指標とした.また,アメダス気象観測資料を用いて,気温や降水量などの気象要素の資料を得た.これら3者間の相関を検討して,有機炭素含有率は,年間クロロフィルa量および冬の平均気温と有意な相関をもつことを見出した.冬の暖かさ(厳しい冬の短さ)が冬季の生物生産性を高め,それが年間の生物生産量に影響を与えて,堆積物として沈積する有機物量を増加させたと考えられる.湖沼堆積物中の有機炭素含有率は,過去の気温(冬の平均気温)の指標として有効である.