抄録
石英を用いた光ルミネッセンス(OSL)年代測定は最近急速な進歩を遂げ,数十年から約10万年前までの堆積物の年代測定の手段として定着しつつある.ルミネッセンス年代測定法の特長は,最も普遍的な鉱物である石英や長石を用いて,堆積物の堆積年代を直接測定できる点にある.しかし現在の約10万年という適用限界では,応用範囲が限られる.そこで現在,ルミネッセンス法の上限を拡大するための研究が盛んに行われている.本総説ではまず,石英を用いたOSL年代測定法について解説したのち,上限年代拡大のために開発中の方法について紹介する.さらに最近,堆積物中の石英のOSLは,起源により特徴が異なることがわかってきた.日本をはじめとする変動帯は地質構造が複雑なため,堆積物中には様々な起源の石英が混在しており,年代測定が困難な場合もある.そこで,このような場合に起こりうる問題点と現時点での解決方法についても紹介する.