地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
特集 ヒマラヤ-チベットの隆起とアジア・モンスーンの進化,変動
チベット高原の隆起がアジアモンスーンに及ぼす影響に関する気候モデルシミュレーション
鬼頭 昭雄
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 111 巻 11 号 p. 654-667

詳細
抄録
大規模山岳がアジアモンスーンなどの気候形成に果たす役割を調べるために,全球大気海洋結合大循環モデルを用いて,チベット高原を含む全地球の山岳の高度を0(M0)から140%(M14)まで段階的に変える実験を行った.500 hPa面の東西風は,山岳高度が40%以下では一年を通してチベット高原の緯度帯より北の40 ºN付近に位置するが,山岳を60%より高くすると冬季にはチベット高原の南側25 ºN付近にあり春季にチベット高原の北へシフトすることがわかった.山岳高度が60%をしきい値として東アジアの循環場には大きな変化がおき,梅雨降水帯は山岳高度が60%より高い時のみ発現した.地表風の変化については,アラビア海北部では山岳が低い場合には一年を通して北風に支配され,モンスーン南風域には入らない.乾燥気候に区分される面積は山岳上昇とともに減少することもわかった.
著者関連情報
© 2005 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top