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地質学雑誌
Vol. 111 (2005) No. 12 P 751-764

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http://doi.org/10.5575/geosoc.111.751

論説

奈良県川上村にある入之波温泉山鳩湯の温泉水は,CO2とCaを多量に溶存する.その化学成分と安定同位体比は,天水起源の水が地下深部からの二酸化炭素を含み,岩石と反応したことを示す.温泉水は長さ70 mの谷を流れ,鉄質沈殿物を含む方解石沈殿物(トラバーチン)を堆積する.また,谷沿いでの温泉水中のFeとCaイオン濃度の減少傾向は,鉄質沈殿物とトラバーチンの分布と調和的である.湯元付近に発達する鉄質沈殿物は,フィラメント状の形態を示し,非晶質な鉄水酸化物を主体とする.鉄水酸化物の沈殿には,大気からの酸素吸収に加え,鉄酸化細菌と思われる微生物の代謝活動が重要に働いていたと考えられる.より下流で発達するトラバーチンは,二酸化炭素の脱ガスにより沈殿し,100μm~数mmオーダーの縞状組織を示すものもある.縞状組織は日輪であり,このトラバーチンの堆積速度は20 cm/年に達することが判明した.

Copyright © 2005 日本地質学会

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