地質学雑誌
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論説
近畿中央部,飛鳥地域の領家変成帯に産する細粒苦鉄質岩の形成過程
西脇 仁奥平 敬元
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2005 年 111 巻 3 号 p. 141-155

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抄録

領家変成帯中の近畿中央部飛鳥地域に分布する苦鉄質岩は,領家古期 花崗岩類に対して層状に産している.苦鉄質岩のほとんどは,コアもリムもほぼ均一な化学組成を示す半自形~他形の斜長石と角閃石からなる.また,斜長石-角閃石温度計を用いて平衡温度を計算するとおよそ500-600℃となることから,これらの苦鉄質岩は角閃岩相の変成作用を被った変成岩であると考えられる.一部の苦鉄質岩に認められる面構造とマグマ期-亜マグマ期に形成された花崗岩類の片麻状構造が斜交関係にあることから,両者は同じ変形作用を被っておらず,苦鉄質岩の面構造は,少なくとも花崗岩類との接触以前に形成されたと判断される.これらのことから,苦鉄質岩は花崗岩質マグマの定置以前に角閃岩相の変成作用を被った後,花崗岩質マグマに捕獲されたと結論づけられる.

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© 2005 日本地質学会
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