地質学雑誌
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論説
2004年新潟県中越地震の地震動を増幅させた扇状地堆積物:新潟県川口町田麦山盆地の例
小松原 琢中澤 努宮地 良典中島 礼吉見 雅行卜部 厚志
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2006 年 112 巻 3 号 p. 188-196

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抄録
川口町田麦山地区は2004年新潟県中越地震によって最も甚大な被害を受けた地区の一つである.当地区の家屋の大部分は,姶良Tnテフラ降下前に形成された魚野川の河成段丘面と,段丘面を開析した谷を埋めて分布する扇状地面上に立地する.扇状地堆積物は地すべり地形が発達する鮮新統~更新統の堆積岩に由来し,軟弱な腐植まじりの砂泥互層を主体とする.地震動による家屋の被害は,扇状地堆積物の厚さが約20 mに達する扇状地中央部で最も激しく,礫層を主体とする段丘と扇状地の縁辺部では比較的軽微であった.地震被害と細粒な扇状地堆積物の厚さの密接な関係は,この堆積物が地震動を増幅し,局地的に激しい被害を引き起こしたことを示す.このことは地震ハザードマップ作成の上で注意すべき事実である.
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© 2006 日本地質学会
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