地質学雑誌
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論説
千葉県房総半島南端に分布する完新統沼層における鬼界-アカホヤテフラの降灰層準:生物攪拌作用の観点からのアプローチ
小竹 信宏藤岡 導明佐藤 茜伊藤 泰弘
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2006 年 112 巻 3 号 p. 210-221

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抄録
千葉県房総半島南端地域に分布する完新統沼層において,露頭では視覚的に存在が全く確認できない鬼界-アカホヤテフラを研究対象とし,それ起源の火山ガラスの層位分布を明らかにするとともに,降灰層準を詳しく検討した.火山ガラスの形態的特徴と化学組成の結果は,鬼界-アカホヤテフラの火山ガラスが,津波堆積物T 3.1よりも上位の泥層中に存在することを示唆した.また,火山ガラスの存在する層準が物理営力の及ばない静穏な内湾の海底で堆積したこと,堆積場周辺の陸域面積が現在のそれよりもはるかに小さいことを重視し,海底に降灰・堆積した後の火山ガラスの挙動を支配するとともに,最終的な層位分布に最大の影響を及ぼした営力は生物攪拌であったと判断した.そして,生物攪拌による火山ガラスの拡散メカニズムを考慮し,鬼界-アカホヤテフラの降灰層準は津波堆積物T 3.1の約15 cm上位付近の層準に位置するものと推定した.
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© 2006 日本地質学会
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