抄録
新潟県長岡市北東方の東山背斜について,形成時期を解明するため,詳細な地質図を作成し,古流向と小断層を調べた.中新統最上部から下部鮮新統にわたる荒谷層と牛ヶ首層の古流向分布は,当時の堆積物供給の軸が東山背斜の軸部から枝分かれするパターンを示す.このような古流向分布が長期間存続し,かつ現在の背斜軸部にも両層が堆積したことから,東山背斜の隆起は牛ヶ首層堆積時までは遡らない,すなわち約3 Ma以降に始まったと推定される.また,地層の分布から,牛ヶ首層の層厚が東山背斜の軸部より東側で大きくなるように見える.これは東山背斜の堆積同時成長を示すかに見えるが,層厚変化は断層による見かけのことに過ぎない.実際,東部地域で地質図規模の正断層が発見され,小断層も正断層が多数を占め,ほぼ南北方向の伸張変形を示す.つまり,この層厚変化は,調査地域の北にある複背斜との間の構造的鞍部に向かうgravitational spreadingの結果であると解釈される.