地質学雑誌
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論説
中部中新統下部唐鐘累層における海進海退サイクルの内部構造と堆積作用の変化に応答した底生動物化石群集の変遷
高橋 健一近藤 康生小竹 信宏
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2008 年 114 巻 9 号 p. 474-492

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抄録

島根県浜田市の中部中新統下部唐鐘累層畳ヶ浦砂岩部層における海進海退サイクルの内部構造と化石相の垂直変化を調査した.各サイクルの厚さは0.9~6 mで,外浜から内側陸棚の堆積環境を示す.一般に各サイクルは下位より,化石密集層や化石の多い堆積物(海進期の堆積物),生物攪拌が顕著で保存のよい化石が散在する層準(最大海氾濫面を含む層準),ストーム堆積物および大型化石の少ない堆積物(高海面期の堆積物)が重なる.各サイクルは,数万年周期で,50 m未満の海水準変動によって形成されたと推定される.貝化石は,海進期堆積体ではGlycymerisが卓越し,最大海氾濫面付近ではAnadaraDosiniaClementiaが卓越する.また,高海面期堆積体ではTurritellaPanopeaが卓越する.こうした化石相の変化は海進海退に伴う,浅海域での堆積作用の変化に起因すると考えられる.

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© 2008 日本地質学会
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